歯が細菌に感染すると、周囲の顎の骨が吸収され、徐々に失われていく「骨吸収」が起こってしまいます。
細菌に感染すると骨が吸収されていくのはどうしてなのか、そのメカニズムについて詳しく知っている人は少ないでしょう。
骨吸収とは何か、なぜ顎の骨が吸収されていくのかを解説します。
骨吸収とは?
骨吸収とは、骨の表面で破骨細胞という骨を吸収する細胞が骨を溶かし、分解する過程のことです。
骨吸収は、骨の代謝によるリモデリングにより、骨を常に新しいものに入れ替えるための重要なプロセスとして行われます。
骨吸収が過剰に発生すると、骨形成とのバランスが崩れて骨密度が低下し、骨粗鬆症などの原因になってしまうのです。
骨吸収のメカニズムについて説明します。
まず骨の表面にある破骨細胞が活性化し、リン酸カルシウムなど骨の成分を溶かす酸や酵素を分泌して骨を分解します。
骨の主成分であるハイドロキシアパタイト(リン酸カルシウム)が溶解されると、分解産物が血中に取り込まれてしまうのです。
骨吸収が起こった後は骨芽細胞が集まり、新しい骨の成分となるコラーゲン線維やリン酸カルシウムなどを分泌して骨を形成します。
骨吸収に関連する状態
骨吸収と関連がある状態として骨粗鬆症があります。
骨吸収が骨形成を上回った状態が長期化すると、骨密度が低下し、骨粗鬆症を引き起こす可能性があるため、注意しなければなりません。
また、女性ホルモンであるエストロゲンには骨吸収を抑制する働きがあるため、閉経後のエストロゲンの低下が骨粗鬆症の大きな要因の1つとなります。
歯周病のような炎症性疾患では、免疫細胞が放出するサイトカインが破骨細胞を活性化させることで、骨吸収が促進されてしまいます。
骨吸収を理解する上で重要なのが、骨のリモデリングです。
骨吸収は新しい骨を作る骨形成と常にバランスを取りながら行われて骨の健康を維持しています。
骨吸収や骨形成の程度を示す指標である骨代謝マーカー、あるいは骨吸収マーカー、骨形成マーカーなどは、骨代謝の状態を評価するために用いられるものです。
まとめ
骨吸収は、破骨細胞という骨を吸収する細胞によって骨が溶かされ分解されていく過程のことで、骨を新たなものへと置き換えるための重要なプロセスとなっています。
破骨細胞が活性化して骨を分解した後、分解物質が血中に取り込まれて骨芽細胞が集まり、新たな骨の成分が分泌されて骨が形成されるのです。
骨形成が骨吸収を上回った状態が続くと骨密度が低下して、骨粗鬆症になってしまう可能性があります。