虫歯が進行すると、歯の内側に虫歯菌が到達します。
内側の歯髄に到達すると激しい痛みが生じ、歯を削る際、痛みがあるために神経を抜かなければならなくなってしまいます。
場合によっては抜歯が必要となるでしょう。
しかし、近年の歯科治療では、神経を残して抜歯を避けることを重視しています。
なぜ重視されるのか、解説します。
なぜ、歯の神経を残すことが大切なのか
歯の構造は、最も外側にエナメル質があり、内側に象牙質、さらに内側には歯髄があります。
歯髄は、歯の神経や血管などが集まっている箇所で、一般的には神経と呼ばれます。
神経を抜く際は、歯髄を除去します。
抜髄という根管治療の一種を行いますが、歯髄の形状は非常に複雑で曲がりくねっています。
ライトで照らしても光が届かないため、治療は非常に困難です。
根幹治療をする場合は、虫歯の部分だけではなく周辺も削り、光が届くようにしなければいけません。
しかし、神経を残すのであれば周辺は削る必要がなくなり、削る量を少なくして歯を守ることができます。
抜髄に含まれる血管には歯に栄養を運ぶ働きもあるため、抜髄によって血管も失われてしまうと、歯に栄養が届かなくなってしまいます。
時間が経つにつれて、栄養が足りない歯は朽ち果ててしまうでしょう。
抜髄せずに治療できれば、歯には血管を通じて栄養が行きわたるため、栄養不足になることを防止できます。
神経を除去した場合の歯の喪失リスクは、前歯が2倍近く、奥歯が7倍以上になるといわれているため、神経を残すことは非常に重要です。
神経を残して抜歯を避けるには?
神経を除去しない、抜歯をしないという治療方法を目指しても、歯は削る必要があります。
露出した神経を除去しなければ痛みが生じるでしょう。
神経を残して虫歯の治療をする方法に、MTAセメントがあります。
歯を削った時、神経を覆うように充填して使用されるもので、MTA歯髄温存方法と呼ばれています。
MTAセメントには、殺菌作用などがあります。
MTAセメントを充填したら、被せものや詰めものをさらに上に被せて歯を保護して、二次う蝕を防ぎます。
治療の際は感染対策をしっかりと行ったうえで、精密治療を行います。
まとめ
虫歯の治療では、神経を抜いたり歯を抜いたりすることは珍しくないのですが、近年では神経を残し、抜歯をしない虫歯治療が増えています。
神経を保護するには、MTAセメントを使用して神経を覆うという方法があります。
永久歯は、削った部分が再生することはなく、一度抜歯するともう生えてきません。
神経を残すことで、治療は複雑になるものの歯を長く持たせることができるのです。