近年の歯科治療では、歯を抜かずに治療するケースが増えています。
しかし、根管治療ではあえて一度歯を抜き、治療をしてから再び戻すという治療を行うこともあります。
意図的再殖術というのですが、どのようなケースで行われるのでしょうか?
意図的再殖術が行われる主なケースについて、解説します。
意図的再殖術はどのような時に行う?
近年、根管治療はマイクロスコープを使用することで肉眼では判別不可能な部分まで判別可能になったため、治療の効果が非常に高まっています。
しかし、マイクロスコープを使用しても対応できない症状も依然としてあります。
マイクロスコープでも対処できない症状に対して行う治療が、歯の意図的再殖術です。
意図的再殖術は、一度歯を抜いて歯根の治療を行い、再び同じように殖え直すという治療です。
ただし、抜歯に適した歯でなければ意図的再殖術はできません。
また、適した歯でも抜歯の際は少なくないダメージを与えることとなるでしょう。
成功率は高いものの、可能かどうかを厳しく見極めたうえで1~2割は失敗してしまうという点を踏まえて、治療を検討してください。
意図的再殖術を行うケース
意図的再殖術を行うのは、通常の根管治療では対応できないケースです。
具体的には、どのような時に行うのでしょうか?
意図的再殖術を行うケースについて、解説します。
まず、ほほ側の骨に厚みがあるせいで、歯根にアプローチできないケースがあります。
歯根へのアプローチはほほ側の歯肉を切開することが多いのですが、骨が邪魔になる場合はアプローチできないため、意図的再殖術での治療が検討されます。
ただし、意図的再殖術は歯根の形状に大きく影響を受けるため、歯根を傷つけずに抜歯できるかどうかが重要です。
2つの歯根が癒合している場合は成功率が高くなりますが、分かれていたり湾曲していたりすると、成功率は低くなります。
また、下顎小臼歯の場合は根尖付近にオトガイ孔という神経や血管の通り道があるため、神経や血管を傷つける可能性がある場合は意図的再殖術が選ばれます。
上顎部でも、上顎洞や副鼻腔との位置関係には注意が必要です。
他にも、外科では対応できない場所の処置を行う場合があります。
骨を大量に削る必要がある場合や、必要がない根を切削する場合などは、意図的再殖術が必要となります。
まとめ
一般的に、根管治療はマイクロスコープを用いて外科的な治療を行いますが、外科的治療では対応できない場合や、他の場所に大きな影響がある場合などは、一度抜歯して治療箇所の処置をしてから再び戻す、意図的再殖術を行うことがあります。
意図的再殖術は、歯を一度抜歯して再び戻すというデリケートな治療であり、歯根の形状などでは難しいこともあるため、気をつけましょう。